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蒔絵・研究日誌

「蒔絵博物館 高尾曜のホームページ」の併設ブログ。
日々の研究の活動報告、展覧会観覧記録や歴史の話など、つれづれなるままに書いています。
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故エドワード・A・ランガム氏の思い出
 故エドワード・A・ランガム氏に会ったのは1996年のことです。私とランガム氏は、蒔絵の銘の研究という分野を日本とイギリスで全く独自に進め、図らずも同じ1995年に発表したのでした。それまでにほとんどなかったこの分野の開拓者となったランガム氏と私はその頃から文通をはじめ、1996年の秋には、私がイギリス北部のノーザンバーランドのランガム氏邸を訪れました。ロンドンから国内線で1時間、そこから車でさらに1時間もかかります。私はこの地を訪れた最初の日本人です。氏の元に、私の「近世蒔絵師銘鑑」の全文英訳版があったのには驚きました。それはFAXで世界中を回っているようでした。
 ランガム氏の書斎は外光を遮断した湿度のある二十畳ほどの縦長の部屋で、部屋の左側の壁面の本棚は数十年前からのオークションカタログや書籍で埋め尽くされ、右側の腰ほどの高さの棚はマップケース状の引出しとなっており、印籠がぎっしりと収納されていました。印籠の収納棚の最上段は覗きのガラスケースとなり、印籠で埋め尽くされていました。最上段のガラスケースには、世界に100点あるとされる古満安匡の百花鳥印籠の内の8点や、17世紀の古い印籠、破笠の印籠等が並んで壮観でした。引出しは流派、作者別に分類され、どの引き出しもニ、三十の印籠で埋め尽くされていました。古満や梶川など、数段ずつの引出しに及んでいました。生涯にランガム氏の手を通過した印籠の数は二千とも三千とも言われ、当時その部屋にあった印籠もを超していました。外国人のコレクションとしては、真作の割合も非常に高く、それは本当に気分が悪くなるほどの質と量でした。日本から遠く離れ、日本人が誰一人足を踏み入れたことのないこの地に、かくも多くの印籠が秘蔵されていたことは不思議としか言えませんでした。私が滞在したのは僅か3日でしたが、その間、多数の印籠を拝見するとともに、蒔絵師に関するさまざまな議論を交わしました。

 ランガム氏は1928年生まれで、幼い頃から、祖父のステファン・ウィンクワース卿や伯父で博覧多識のウイリアム・ウィンクワース卿の薫陶を受け、イートン校、ケンブリッジ大学という学歴の秀才のエリートで、10,000エーカーの農場を経営していました。1972年にオックスフォードのアッシュモリアン美術館で初めてコレクション展を開催され、集大成のように1995年『印籠大事典』を刊行されました。日本に来たことは一度もなく、来るつもりもないようでした。理由は話されませんでしたが、現実の日本を見たくなかったのかもしれません。

 その後も文通を続け、最後は2007年に拙著『柴田是真生誕二百年展』図録を贈った時でした。ランガム氏は日本語が読めないので、英訳版が欲しいということでした。翻訳版を約束しましたが、その後、私は多忙をきわめ、ようやく英文誌DARUMAに評伝「柴田是真 その生涯と芸術」の英語版が掲載されたのは、2009年の夏のことでした。ところがその2ヶ月前、ランガム氏は突然亡くなられてしまっていたのです。残念でなりませんでした。亡くなってから贈った英語版は今、夫人のアン博士によってランガム氏のあの書斎に飾られているそうです。


1972年のアシュモリアン美術館での最初の展覧会の時の図録


同図録の扉にかかれた私へのメッセージ


ノーザンバーランドのランガム氏の農場
| 研究 | 03:51 | comments(0) | trackbacks(0) |









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