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蒔絵・研究日誌

「蒔絵博物館 高尾曜のホームページ」の併設ブログ。
日々の研究の活動報告、展覧会観覧記録や歴史の話など、つれづれなるままに書いています。
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「漆のダ・ヴィンチ 柴田是真」『極上 美の饗宴』NHK BSプレミアム

NHKのBSプレミアム『極上 美の饗宴』「漆のダ・ヴィンチ 柴田是真」が放送されました。番組としてはよくまとまっていたと思います。
 「人の営み」というまとめなら、落穂図」解題もしなければいけません。是真自筆の箱書に「盆 蒔絵落穂図」とありますが、これは次のような画題です。
 薬缶は農作業の合間、喉を潤すための水を入れた素銅(すあか)の薬缶です。薬缶の口には虫が入り込まないよう草を折って詰めて栓にしています。畦道を通って来る時に、収穫した稲束から落ちた稲穂=落穂を、もったいないので拾い集め、それを薬缶に掛けて乾しており、その稲を狙ってキリギリスが止まっている。そんなどこの農村でも見られる風景に抒情性を見出した着眼点こそが、まさに是真絵画の俳諧性でしょう。もっともこれは農家出身蒔絵師さんが教えてくれた受け売りです。輪島ロケの夜に職人さん達と12時まで飲んで、ようやくこの絵の意味が分かり、みんなすっきりして眠れました。

 今回、私が番組に提案し、再現した是真の素彫技法については、これまでその魅力を語った人はほとんどいませんでした。正に、動画ハイビジョンだからできたことで、たぶん世界初のことでしょう。文章で伝えるには限界がありますが、この後、明治美術学会『近代画説』で、論文として発表します。

 輪島ロケは、往復含め土日2日の強行軍で大変でした。とても忙しい仲間達に貴重な時間を割いて協力してもらいました。番組では使いませんでしたが、実は全工程撮影しました。テレビでは手板の青銅塗の色があまり出ていませんでしたが、かなりよく似せています。実はこれが大変でした。ロケの6日前、手板を見せてもらったら色が悪く、そこから木地まで全部研ぎ下してやり直してもらいました。たった4日青銅塗、錆上げ、薬缶の提手の暈し塗、落穂の高蒔まで仕上げて、素彫前の状態まで持っていったのですから、たいしたものです。正に是真もそのくらいのスピードで作品を仕上げていたのだろうと実感しました。昔の人は手を入れるところと、入れなくても良いところをよく心得ていましたから。高上げに錆上げ型紙の手法を使ったのは、早く出来るからです。特にこの盆は、73歳の同じ年の作品がこれまでに4点確認されており、並行してまとめて一気に作った注文の数物だからです。たぶん軽く10点は作ったのだと思います。
 今回ハイビジョンで撮って判明した意外なところは、薬缶の提手の籐蔓巻のところです。黄漆で籐蔓を表現した隙間の朱漆のところに、両側に朱漆を残して黒漆を1本入れているところです。しかも黒は炭粉を蒔いて艶を落としています。再現手板でも、その通りに作りました。やはり是真にとっての見せ場はキリギリスで、見る人がその近辺に目を近づけることを意識してのことでしょう。青銅塗の黄色い顔料も、わざわざ粗い粒子を混ぜて実物に近づけています。再現の方はテレビではそこまで写っていませんでしたが。完成した手板は、今、私の本棚に飾られています。

再放送は12月4日(日)13:00〜13:58です。

 「漆のダ・ヴィンチ 柴田是真」



再現した手板


再現した手板の拡大

| テレビ番組 | 01:28 | comments(4) | trackbacks(0) |
西海様 コメントありがとうございました。もっと多くの日本人に深く知ってもらいたいですね。刀の鍔は、拵に掛けた場合、「是」の文字が見えないわけで、蟻と「真」の字のみなわけですから、そこもきちんと説明しないといけませんね。
| 高尾曜 | 2011/12/05 12:27 PM |
初めて目にしてその素晴らしさが私の胸に強く押し寄せてきました。特に刀のつばの“真”の文字をアリが巣穴に引き入れようとするこのユーモアさはたまりません。若い日本の人に特にわかって欲しいと思うのは私のおごりでしょうか。
柴田是真の作品をじっくりと見たい、背景を知りたいと思いました。私の人生(65歳)で一番素晴らしいと感動した作品でした。
| 西海寿美恵 | 2011/12/05 11:32 AM |
三隅様 コメントありがとうございます。撮影をしていた収蔵庫には、茶箱や手箱、重箱と思われる、樅箱や塗箱がたくさん映っていましたね。秘蔵コレクションなので、公開される機会があると良いと思います。
| 高尾曜 | 2011/11/30 12:05 PM |
放送を見る前にハリリコレクションの是真の本を見直してから放送を拝見しました。画面に現れる作品が少なく期待外れの感が残りました。もっともっと是真作品の素晴らしさを取り上げてくれる企画を望みます。多くの研究者、漆芸家さん
には、愛好家や漆を勉強する学生の為にも沢山の作品を見て今なぜ是真なのかを考えてほしいと思います。漆工界はもっと自由に新しく創造的であってほしいと、考え期待しているのは私だけではないと思いますが?
| 三隅悠 | 2011/11/29 12:06 PM |









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