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蒔絵・研究日誌

「蒔絵博物館 高尾曜のホームページ」の併設ブログ。
日々の研究の活動報告、展覧会観覧記録や歴史の話など、つれづれなるままに書いています。
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「山田常嘉の文献研究」を『漆工史』に発表しました。
 今年度の漆工史学会は、今日、MIHO MUSEUMで開催されていますが、諸般の事情で出席できませんでした。今頃『漆工史』36号が刊行されて配布されていることでしょう。私は36号で「山田常嘉の文献研究 新出史料の由緒書を中心に」を発表しました。史料を発見したのは1997年、論文を書き始めたのが2005年の大晦日でした。ずいぶん長い時間がかかってしまいました。
 1997年、当時民間企業に勤めていた私は平日に休暇を取ることが困難でした。昼夜連勤した翌日などであれば平日の昼間に時間を取れたため、そうした時間を利用して、ふらつきながら、図書館、資料館で調べ物をしていました。人間極限状態にあると意外に勘が冴えて思いもかけない資料を見つけることができます。そうして「近世蒔絵師銘鑑」を発表したのは1995年冬から1996年秋でした。しかし山田常嘉については系図由緒書がなく、歴代の事歴は全く不明でした。これはもう絶望的で、近世漆工人研究の上で最大の謎だととしか言いようがありません。明治以来誰も見たことがなく、存在するかどうかすら、誰も知らなかったからです。
 しかし私は諦めずに考え続けていました。そして、もし存在するとすれば、国立公文書館にあるとしか考えられない、と思うようになりました。休日に北の丸公園の休館している国立公文書館の前を通るたびにそう思うようになり、なぜか確信に近い思いを持つようになりました。
 その日は、国立近代美術館工芸館に用事があって平日に休暇を取っており、約束の14時より、なぜか30分早く竹橋の駅に着きました。そこで今日こそ国立公文書館捜索しようと思い立ちました。初めて館内に入り、2階に上がると、当時は検索端末もなく、冊子の目録しかありませんでした。迷わず多聞櫓文書の目録を取り、由緒書の目録をめくりました。入館して3分も経たない内に、梶川、古満といった御用蒔絵師の由緒書が存在することを確認し、さらに見慣れない職名の御差御鞘塗師山田幸之丞という由緒書の存在を知りました。私はこれこそが山田常嘉由緒書に違いないと直感しました。それは学生の時に、シカゴでニューヨークのディーラーに「常嘉(花押)」銘十二支蒔絵の拵を見せてもらったことや、『東京名工鑑』に記載される当時67歳山田常嘉が、印籠の他にに蒔絵をしていた経歴などを連想したからでしょう。目録を確認したところで請求番号を控え、工芸館に向かいました。用事を済ませて国立公文書館に戻り、はやる気持ちを抑えつつ史料を請求し、出てきたものは、まさしく幕末当時の由緒書で、先祖山田常嘉との記述を見つけました。それは幕末に幕府に受理されてから、事務的にすら全く開かれたことがないものでした。公文書館ですら、目録化のために冒頭しか開いていないようでした。展じてゆくと、虫食いでつながった紙が、ペリペリと音を立てて剥がれて行きました。130年間、誰一人として開いたことがないと思うと震えました。
 その内容は詳細で、驚愕すべきものでした。おおよその内容をメモし、当時は業者によるマイクロ複写しか方法がなかったので、複写申請をしました。その日申し込んだのは、山田幸之丞、古満清兵衛、梶川鉦太郎、関数馬、小林八十吉、野村忠兵衛の由緒書でした。
 これらは本当に大発見でした。幕臣の由緒書ですら現存しているのは一部で、御用職人もほんの一部が現存しているに過ぎず、山田常嘉の由緒書が残ったのは奇跡です。しかし考えてみれば、最もあるべき場所に、公然と所蔵されていながら、よく誰にも気が付かれずに、私が見つけ出すのを待っていてくれたとも思います。
 この発見は2人だけには、存在を密かに知らせておきました。万一発表前に死んでしまったら、この先数十年、また誰にも気づかれないといけないので、万一の際には代わりに発表してくれそうな方に。1人は徳島城博物館の小川裕久氏で、もう1人は『武士の家計簿』を出す前の磯田道史氏でした。しかしだいぶ時間はかかりましたが、めでたく今日、論文として刊行されました。
| 新刊 | 14:17 | comments(0) | trackbacks(0) |









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